Share

135話 目覚め

last update publish date: 2026-06-04 07:28:04

「聖カトリーナへ連絡を入れろ。搬入時にスムーズに対処出来るよう、高度モニター完備の部屋を確保。新見医師に待機をさせてくれ」

俺はそう言って、燈の手を握る。

「後発の救急車に乗っている成人男性も同じように聖カトリーナへ搬入しろ、俺が対処する」

俺はそう言いながらスマホを出し、湊くんへ連絡を入れる。

~聖カトリーナへ向かっている。救出したのは千堂彰の息子の千堂理だ。愛欲の女王の主成分であるベンゾジアゼピン系物質によって、ベンゾ・マスクになっている。対処は俺がする。それからEMSOの地下階は千堂彰の開発した新薬によって汚染されているから、入らないように、気を付けてくれ~

一気に送って、俺はスマホをしまい、燈を見る。輸液が入って、少し落ち着いたようだ。意識レベルも少しずつだが戻って来ている。

大丈夫だ

そう思い、ホッとする。燈の頭を撫で、その額に口付ける。

「俺が居る、大丈夫だ。俺が燈を守るから」

そう呟いて、俺はEMSO日本支局内で起きた、色々な事を反芻する。

◇◇◇

階段を必死で上る。

(どうやってここを出る? 階段を上って上の階に行き、反対側へ走って……)

そんなふうに考えながらも、息
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • 跪くのはあなたです 流産の夜、私を選ばなかった夫は五年後、後悔する   296話 ヒント

    「この男たちはリネンカートをどこへ運んだのかしら」私はそう言いながら通用口から外へ出る。外は漆黒の夜。風が吹き抜けて、木々がザワザワと音を立てている。「ここに業者の車が停まっていたのか?」湊が警備員に聞く。「いえ、車は停まっていませんでしたけど」警備員がそう言う。「停まってない?」湊が聞き返す。「えぇ、停まっていませんでしたよ」警備員はそう言いながら通用口の左手奥の駐車場を指差す。「あっちに停めてるって言ってましたね。遠いのにご苦労様って言ったら、そちらも深夜帯の業務、お疲れ様って……」きっと和やかに会話をしたのだろう。怪しまれないように、善良な振りをして。「行ってみよう」遼大にそう言われて頷く。左手奥の駐車場。車が何台か停まっている。宿直の人のもの、関係者の車……。当然のようにそこにはもう、業者らしい車両は停まっていない。「ここにはカメラは無いのか?」遼大がそう聞くと湊が周囲を見回しながら言う。「あそこにある」そう言って湊が指差したのは外灯。少し離れた所に立っている外灯には丸い半円型のカメラが付いている。「チェックしよう」遼大がそう言い、私たちは再び、セキュリティー棟に戻る。◇◇◇「これだな」遼大がそう言って指差したのは、駐車場を映した監視カメラ映像の中の人物。大きなカートを押しながら二人の男性が歩いている。その映像を見ながら私も遼大も湊も皆がどの車に乗るのかと、思っていたと思う。けれどその二人組はどの車両にも乗らなかった。代わりに。そのままその二人組は駐車場の端までカートを押しながら歩き、茂みの中に入って行く。「茂みの中?」私がそう呟くと、遼大が言う。「ズームしてくれ」そう言われたセキュリティー棟の人間が映像を拡大する。茂みの中に入った二人組は白い何かを持ち上げると、胸の高さのフェンスを軽々と越えさせ、フェンスの向こうに居る誰かにその白い何かを渡している。そしてそのまま大きなカートをサッと手早くたたみ、そのカートもフェンスを超えさせ、自分たちもフェンスを乗り越えた。フェンスの向こうには暗闇に紛れるように真っ黒なワゴンが停まっている。そのワゴンに全てのものを積み終えると、ワゴンのドアが閉まり、走り去る。「病院の中に停まっていた訳じゃ無かったんだな」遼大がそう言って苦笑する。確かに病院内

  • 跪くのはあなたです 流産の夜、私を選ばなかった夫は五年後、後悔する   295話 上からの指示

    「何か物音は聞こえなかったか?」湊が看護師に聞く。看護師たちはみな揃って、首を振る。「監視カメラの映像をチェックしよう」遼大がそう言う。「そうね、その方が早そうだわ」私がそう言うと湊が頷く。「一応、このまま病室の方は証拠保全の意味も含めて、誰も立ち入らないようにしておこう」湊はそう言って看護師たちに言う。「このまま誰も病室には入らないよう、手配してくれ」◇◇◇私と遼大、湊の三人で深夜の病棟を出て、セキュリティー棟へ行き、監視カメラの映像を確認する。時間を遡っても、愛沢くるみの居た病室の廊下には、異常は見られない。誰も歩かず、静かなものだった。「何も映ってない……」そう呟きながら湊が考え込む。「もう一度、もう少し時間を遡って流してくれ」遼大がそう言うと、監視カメラの映像がもう一度流される。映像を注意深く見る。一瞬だけ、監視カメラの映像が乱れる。私と遼大はそれを見て、顔を見合わせる。「差し替え……」私がそう言うと遼大も頷く。「有り得る話だな」そう言って溜息をつき、腕を組む。「考え得る経路、全部の監視カメラの映像をチェックしましょう」湊が遼大にそう言う。「あぁ、徹底的に映像をチェックした方が良いだろうな」遼大がそう言う。◇◇◇私たちはそのまま、あらゆる可能性を考えて、あらゆる経路の監視カメラの映像をチェックした。その中で一つだけ、映像の片隅に動く何かを見つける。「ねぇ、これ……」私がそう言うと、遼大が覗き込む。「ちょっと待ってくれ……ここをズームして」遼大が映像を指差し、指示を出す。映像がズームする。そこに映っていたのは。大きなリネン回収用のカートを押す男性二人組。パッと見、清掃業者のような制服を着ているけれど。「こんな深夜帯に回収をする業者なんて見た事無いわね」私がそう言うと遼大が頷く。「あぁ、有り得ない」見つけた映像は病棟の最東端、愛沢くるみが入院していたあの部屋に近い。そして。「エレベーターに乗ったな」遼大がそう言いながら、今度はそのエレベーターの映像を出すよう、指示をする。セキュリティー棟の人が映像を切り替えてくれる。映像がエレベーター内のものに切り替わる。日時を指定すると、現れた映像には、大きなリネン回収用のカートを押す清掃員の格好をした男性二人。リネン回収用のカートの中はシーツで

  • 跪くのはあなたです 流産の夜、私を選ばなかった夫は五年後、後悔する   294話 不意打ち

    「俺は高嶺邸でお祖母様と話した時、どうして燈に関するファイルがそこにあるのか、とそう考えた。そしてそれは反高嶺派の人間が送って寄こしたものだろうと思っていたが」遼大はそう言って少し溜息をつく。「それが見合いを進める為、そしてその後の東都メディカルへの陽動作戦だったと考えれば、あのタイミングでお祖母様から見合いの話が持ち込まれた事にも納得がいくんだ」遼大にそう言われて私もそう思う。立て込んでいる状況で持ち込まれたお見合いの話。唐突に遼大が戦力として離脱しなければならなかった。更に、東都メディカルと千堂家の繋がりを匂わせ、もしかしたら東都メディカルも一枚噛んでいるのかもしれないと思わせる……そうする事によって、自分たちが確保している愛沢くるみへは関心が薄くなる……。「怪我の功名はあったけどな」そう言って微笑む遼大は、賀神さんと御堂院静香の事を言っているのだろうと分かる。「とにかく現場を見てみないとね」私がそう言うと遼大が頷く。◇◇◇聖カトリーナに到着する。時間帯的にも裏の緊急搬入の為の出入り口しか空いていない。私と遼大がそこへ向かうとそこで湊が待っていた。「湊くん」遼大が声を掛ける。「高嶺さん、燈」湊も連絡を貰ってすぐに飛び出して来たのだろう、シャツとスラックスという軽装だった。「とにかく、中へ」湊がカードキーをタッチして重い自動ドアを開け、私たちは足早に院内へと滑り込む。「出入口はあの夜間の出入り口しか無いのよね?」歩きながら私がそう聞くと、湊が言う。「患者や医師などが出入りできるのはあの夜間の出入り口しか無いが」湊はそこで言葉を区切る。「業者は分からない」そう言われて私は聞く。「業者?」そう聞くと湊が言う。「どういう経路で愛沢くるみを連れ去ったのか、全く分からないんだ」そう言いながら歩く私たちの足音が深夜の病棟に響く。「俺は聖カトリーナに到着するまでに、いくつかの経路を予想した。可能性として一番高いのは、愛沢くるみを何らかの方法で意識を失わせ、搬入用のエレベーターで地下階へ行く方法だ」湊にそう言われて頷く。「そうね、それがおそらく一番、無難な方法ではあるわね」地下階へ行ってしまえば、そこから車で運び出すのは容易だ。でも。「それだと地下階からの車両の出入りのログが残るな」遼大がそう言う。「そうなんです、

  • 跪くのはあなたです 流産の夜、私を選ばなかった夫は五年後、後悔する   293話 陽動

    夜の病棟は静かに時が進んで行く。時折、廊下を歩く足音や、少し離れた場所でのパタパタとした足音が響く程度の本当に静かな夜だった。私はベッドの中で、今後の事を考えながら、自分がどう行動すべきかを入念に考え抜き、計画を立てていた。佐伯燈、高嶺遼大は賢い。私の少しの変化や表情、言動できっと私の記憶喪失が嘘だと見抜くだろうと思えた。どこかへ逃亡する?逃亡の計画を立てたとしても、協力者がいなければ、成立はしない。現状、私には体の傷があって、今はその治療も進めているのだから。つまりは私はここから動くことが出来ない。このままずっとしらを切り通していても、きっといつかは真実が露呈する。そしてそれはきっと私の予想よりも早いだろう。指の爪を噛みながらベッドの布団の中に潜って考える。どうしよう……どうするのが一番良いのかしら……。湊はもう頼れない。私が、何も知らない無垢な状態の私が手を伸ばして湊に触れても、湊は顔色一つ変えなかった。以前までの湊なら、何なら私と誰も会えないよう、手配くらいはしてくれただろう。きっと佐伯燈や高嶺遼大から私を守って、矢面に立ってくれていた筈なのだ。けれど湊は私の手を忌避して、距離を取った。何となく事情を聞き出そうと思ったけれど、公的機関、関係機関とも連携を取るなんて話が出たのだから、きっともう手を回してはいるだろうなと思えた。それじゃあ、ダメなのよ!私が捕まっちゃうじゃない!その時の私は色々と考え込んでいて、気付いていなかった。その病室に入って来る人の気配に。◇◇◇けたたましく鳴るスマホの着信音。私も遼大もその音で飛び起きる。スマホを手に取り、画面を見ると、そこには湊の名前。「もしもし」まだ寝惚けている声でそう答えると、電話の向こうで湊が言う。『燈……愛沢くるみが居なくなったそうだ』スマホのスピーカーから流れ出る湊の声に遼大が即座に反応する。「湊くん、俺だ、高嶺だ。愛沢くるみが消えたってどういう事だ?」そう聞きながら遼大は既にベッドを出ている。私もベッドを出て、着替えを始める。『俺にも今、まだ詳しい事情は分からない……聖カトリーナから緊急でそう連絡が入ったんだ』◇◇◇聖カトリーナに向かう。「愛沢くるみが消えたって……一体……」やっと回り始めた頭でそう言葉に出した途端、ハイスピードで思い付く。「千堂

  • 跪くのはあなたです 流産の夜、私を選ばなかった夫は五年後、後悔する   292話 和解

    ホテルに戻った時にはもう既に夜だった。「賀神、夕食一緒にどうだ?」遼大が誘う。賀神さんは少し笑って言う。「今日はこの後、静香と会う事になっていて」そう言われて私も遼大も顔を見合わせて微笑む。「そうか、じゃあまた明日」ホテルのロビーで別れて、私と遼大はそのままホテルのレストランに向かった。「あの二人、お似合いだったわね」私がそう言うと遼大も頷く。「そうだな、俺もそう思うよ」私は不意に心配になり、聞く。「そう言えば、お祖母様の方は大丈夫なの?」そう聞くと遼大が苦笑する。「今のところは何も言って来ていないが……今日あたり、報告を受けているかもしれないな」御堂院家とのお見合いを強行したお祖母様。そこには高嶺家という家柄や、その人間の出自の問題などもあるんだろう。不意に遼大はふわっと笑い、言う。「お祖母様に何を言われても俺のパートナーは燈だけだから」そう言われて私も微笑む。「えぇ、分かってるわ」◇◇◇静香との待ち合わせの場所に行くと、そこには御堂院氏が待っていた。「やぁ、賀神くん」そう言われて私は少し苦笑する。「先ほどはどうも」そう言うと、御堂院氏も少し苦笑し、言う。「静香との時間を邪魔して悪いな、少しだけ時間を貰えるか」そう言われて承諾する。「分かりました」御堂院氏はそのまま話し出す。「まずは謝罪をさせて欲しい」そう言って深々と頭を下げる。「すまなかった」正々堂々、正面切っての謝罪に私はまた苦笑する。「静香との交際を無理やり裂いてしまったが」そこで御堂院氏は頭を上げる。「親なりに子供の事を思っての事だった」そう言われて私は言う。「はい、承知しております」そう言うと御堂院氏は少し笑い、そして言う。「あれからどれだけの時間が経とうとも、静香は一向に見合いもせず、恋人も作らなかった。それを見て、無理やり婚約させようとした事もあったが、静香が首を縦に振らなかったんだ」御堂院氏の横で静香が微笑んでいる。「そんな静香が舞い込んだ高嶺家との見合いに行くと言った時は驚いたよ」そう言いながら御堂院氏は微笑み、静香を見ている。「その裏で君との再会があったと聞いて、やっと分かったんだ」そこには父としてのほんの少しの諦めが見える。「私は娘可愛さに娘の事を何も見ていなかった」御堂院氏は私を見て言う。「娘

  • 跪くのはあなたです 流産の夜、私を選ばなかった夫は五年後、後悔する   291話 安堵

    東都メディカルの正面玄関に到着する。正面玄関にはスーツ姿の数人の男性が私たちを待ち構えていた。遼大が先陣を切り、車を降りて、私に手を差し出し、エスコートしてくれる。私の後に賀神さんが降りて、私たちが立ち並ぶと、男性の中の一人が前に進み出て言う。「はじめまして。私は東都メディカル院長の御堂院と申します」恰幅の良い男性。御堂院と名乗ったその男性が、御堂院静香のお父様なのだろう。「EMSO最高責任者の高嶺だ」遼大は背筋を伸ばしてそう言い、御堂院氏を見下ろすように手を差し出す。二人が握手するのを見ていると、御堂院氏が言う。「先程は大変失礼致しました」そう言いながら苦笑する御堂院氏に遼大が聞く。「何のお話ですか?」そう聞かれた御堂院氏が言う。「娘とのお見合いの件です」そう言われて遼大がチラッと賀神さんを見る。(御堂院家のお父様がそう言うという事は、賀神さんの事を今もあまり良く思ってはいないという事かしら)私はそう思いながら二人を見る。「あぁ、その事ですか。私としては全く」そう言って遼大は私と賀神さんへ視線を向けると、御堂院氏に向けて言う。「彼女はEMSO臨床顧問の佐伯燈、私の婚約者です」私をそう紹介した遼大は驚いている御堂院氏を尻目に更に言う。「彼がEMSO日本支局の支局長であり、世界的な心臓外科のエキスパートの賀神怜です」御堂院氏が賀神さんに視線を向ける。「EMSO日本支局、支局長……」そう呟きながら、呆気に取られているのが分かる。「賀神のEMSO日本支局長就任は、つい最近、決まった事なんですよ」遼大がそう言って微笑む。「ご無沙汰しております」賀神さんはそう言って手を差し出す。御堂院氏がその手を取り、二人が握手する。「まさかEMSOに入局しているとは、思いもしなかったよ」御堂院氏の後ろには控えめに御堂院静香が立っている。「今日は急に視察を決めてしまって悪かった」遼大がそう言う。御堂院氏は気まずそうに微笑む。「いえ、うちはいつ来て頂いても」御堂院氏はそう言って私たちを中へ促す。「どうぞ」◇◇◇視察は順調に進み、残すは地下階への視察のみとなった。「地下階には何が?」遼大が白々しくそう聞く。「地下階は基本的に倉庫や精密機械の保管、ファイルの保管などですね」御堂院氏がそう言う。地下階へ向かうエレベーターに乗

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status